発音が悪いから、英語を話すのが怖い──そう感じている人に、聞いてほしいことがあります。
片山さつき元大臣の英語を、見たことがありますか。

G7やダボス会議で、通訳なしで議論を交わす場面があります。
発音はネイティブではありません。それでも、通じています。

なぜ通じるのか。そこに「発音コンプレックスを持つ人が本当に知るべきこと」があります。

ネイティブ発音が必要だという思い込み

英語の発音に自信がない人の多くは、こう思っています。

「自分の発音は日本語なまりだから、通じない」
「もっとネイティブに近い発音にならないといけない」

でも、本当にそうでしょうか?
確かに、英語が母国語でない他の国には日本人よりも英語を使いこなしている人がたくさんいます。

世界で英語を話している人の大半は、ネイティブではありません。インドやシンガポールのように英語がビジネスでは公用語に近い感じで使われている国もあるし、英語に近いアルファベットの言語であるフランスやイタリア、ドイツのようなヨーロッパ諸国と日本は同じノンネイティブでも置かれている状況が違うし、母国語の性質、英語という言語との違いの大きさも異なります。

インドやシンガポールのように自国訛り丸出しの英語だって国際舞台では普通に通じている。だから日本人だって日本語訛りの英語でいいのだ、と開き直るのも問題があります。

問題は「なまりがあるかどうか」ではなくて、「英語として通じるかどうか」なのです。


通じる英語と通じない英語、何が違うのか

通じる英語には、共通した骨格があります。

個々の音の正確さではなく、英語らしく聞こえる構造があるかどうか。
これが、通じる英語と通じない英語を分けています。

具体的には、5つのポイントです。

① 尻下がりのリズム
英語には、強く読む母音の中に「落ち」があります。強勢を置く母音の最初が強く、同じ母音の終わりに向かって弱くなる。ボールが弧を描いて落ちていくようなイメージです。日本語は母音を均一な強さで発音するため、これを意識しないと英語らしいリズムが出ません。

② 音節の数
英語には音節のまとまりがあります。音節の数が多すぎたり少なすぎる発音をすると、別の単語に聞こえたり、何を言っているか判別できなくなります。たとえば「secretary」はsec・re・tar・yの4音節ですが、多くの日本人はse・ku・re・ta・riのように5音節に増やしてしまったり、tarとyを1音節のように発音してしまいます。すると相手は「secret(秘密)かもしれない」と推察することになり、違う単語に聞こえてしまうという事故が起きます。

③ 単語の強弱
英語は強く読む音節と弱く読む音節がはっきり分かれています。強弱のパターンが崩れると、ネイティブスピーカーには普段聴いているものと全く違うものに聞こえてしまうため、聞き手の処理負担が一気に上がります。

④ 文末を下げる
平叙文の終わりは下げる。これがないと、言い切っているのか、続きがあるのかが伝わりません。

⑤ 有声音前の母音を長く
“bad”と”bat”、”bag”と”back”。この違いは母音の長さで生まれます。後に来る子音が有声音(d, gなど)であれば母音は長く、無声音(t, kなど)であれば短くなる。だから子音は正しく発音することが大事です。そして母音は、強弱・長さ・高低の差をしっかり出すことが重要です。この差が英語らしいリズムを生み出します。


この5つは、ネイティブ発音の話ではありません。
英語として最低限、聞き手に「英語として受け取ってもらえる骨格」の話です。

片山さつき氏の英語を聞くと、この骨格が備わっています。だから通じるのです。


日本人英語、ネイティブの英語、片山大臣英語の違い

それぞれの英語の特徴をイメージにしてみました。
例えばThis is a pen.という英文を読んだ場合。

典型的な日本人の英語:

  • 音の数が多すぎる
  • 強弱と長さの差がない
  • 音が弾んでおらず、最後がピタッと止まっている

片山さつき英語の特徴:

  • 音節の数 → 正確に守っている ✅
  • 強弱の差 → ある程度ある ✅
  • 音の弾み(リズムの跳ね感)→ あまりない △ ← ここがやや日本語的に聞こえる原因

でも、この△が「聞き手に負担をかけないギリギリの線」に収まっている。だから通じる。そして日本人が真似しやすい現実的な目標になっています。

this is a penを読み上げた場合の典型的な日本人英語と片山さつき英語の特徴や違い

「カタカナ英語でいい」とは違う話

ここで誤解しないでほしいことがあります。
「なまりがあってもいい」は「カタカナ英語でいい」という意味ではありません。

日本人が陥りやすい最大の問題は、訛りではありません。
子音の後に余分な母音をつけてしまうことです。

たとえば「desk」をデスクと発音すると、英語では3音節(de・su・ku)に聞こえます。
英語としては1音節の単語です。余分についた母音は、聞き手にとって雑音でしかありません。
訛りではなく、英語として処理できない余分な音です。これが積み重なると、何を言っているのかが判別できなくなります。

「日本語訛りの英語でいい」と開き直っている人の多くは、この余分な母音を取り除けていません。
訛りに寛容になっているのではなく、雑音をそのまま残しているだけです。
繰り返しますが、受け取る方からしてみれば、1つだと思っているものを3つ持ってこられたら「ちょっと間違えちゃったんだな」ではなく「3つ?これは一体何?」と混乱してしまうのです。

通じる英語は「ありのままで開き直る勇気」で乗り切るのではなく、「技術と知識」で乗り切ることができるのです。

目指す基準を変えよう

片山さつき氏の英語を分解すると、こうなります。

  • 音節の数を正確に守っている
  • 強弱の差がある
  • 子音の後に余分な母音をつけない

この3つが、英語として通じるための最低必須条件です。
片山氏はこれをきちんと満たしています。

一方で、音の弾み(リズムの跳ね感)はやや少なく、母音を日本語の音で代用することもあります。
それでも通じる。なぜなら、必須条件が揃っているからです。

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「ネイティブ発音を目指す」必要はありません。
もちろん目指したい人は目指せばいいのですが、全員に必要なことではないということを強調しておきます。

代わりに、「片山さつきレベルを目指す」に切り替えてみてください。

「日本語訛りでいい」と開き直るのではなく、英語として通じるための最低必須条件を知って、ギリギリその条件を満たすということです。

発音コンプレックスを持つ多くの人が「自分の発音は直らない」と感じています。でも実際には、直す必要があるのはネイティブとの差ではありません。余分な雑音を除き、必須条件を満たすこと。それだけです。

そこを整えれば、英語は通じるようになります。

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英語教育のために親子が対話をしているイラスト。カジュアルな服装をした男女が、楽しそうにコミュニケーションをとっている様子が描かれている。