読み書きはどうにかなるけど、英語が聞き取れない、話せない。
よく聞く話ですよね。ついつい得意なことばかりやりがちですが、リーディング力もリスニング力も、どちらも英語をマスターするのに欠かせません。
英語を読めるようになりたい、英語を聞き取れるようになりたい、という願望は誰でも持っているはず。
でも、時間は限られているし、そんなに色々やりたくない。
リーディングとリスニング、どちらを先にやったら効率よく英語がわかるようになるのか。
悩んだことはありませんか?大学生や社会人に英語指導を15年以上している英語教育プロの視点から、リーディングとリスニングの関係、優先順位について説明します。
この記事でわかること
この記事を読むと、どちらを先にやればいいのか、そして何をどのくらいやればいいのかわかり、効率よく勉強できるようになります。ネットにはいろいろな情報が出ています。TOEIC満点講師、人気英語YouTuber, カリスマ予備校講師、英語コーチなど。それが実体験からのものである限り、どの人のやり方も間違ってないし、良い情報だと思います。でも、あくまでそれはその人の性質と、知っている範囲、経験した範囲での論です。参考にするのはいいと思いますが、振り回されてしまってあれもこれも取り入れて、努力の割に成果を出せず焦っていませんか?
この記事では、私個人の感覚や経験だけでなく、専門的な研究結果なども入れて説明します。TOEICとか英検とか受験とか、英会話力アップとか、ジャンルに関係なく応用できる内容になるように書きました。
少し長い記事ですが、ぜひ最後まで読んで納得し、やる気を出して、英語力アップに役立てていただけたら嬉しいです。
リスニングとリーディングの意外な関係
TOEICや大学入試などの試験でも、リーディングとリスニングはセクションが違います。市販の教材でも、「それぞれ特化した対策をするべし」、というのが定説。そのせいか、リーディングとリスニングは、全然違うスキルが必要なものだと思っている人も多いでしょう。でも、実はこの二つのリンクは強いんです。
すごくざっくり役割を分けるとこんな感じです。
・リーディングは、文法、語彙、文章構造の理解に役立つ
・リスニングは、発音、イントネーション、会話の流れの理解に役立つ
この役割を理解すると、自分がなぜリーディングが苦手でリスニングはそんなに抵抗なくできるのか、あるいは逆なのかがわかるのではないでしょうか。
リーディングよりリスニングの方が簡単?
リーディングよりリスニングの方が簡単でとっつきやすく思える人が多い理由、わかりますか?
リーディングは、文法や語彙力など、蓄積したものが組み合わさって初めて理解できるもの。一方で、リスニングは単発の知識で理解しやすい。その文章の構造がわからなくても、知っている単語やフレーズなど、部分的な知識でパッとキャプチャーして、「あ、わかった!」という気分になることができるからです。
単発の知識や努力で早く効果を感じやすいので、その手軽さに釣られてリスニング対策ばかりやってしまう。そのせいか、TOEICでもリスニングスコアはどんどん上がるのにリーディング(文法)セクションが上がらなくて全体のスコアが伸び悩むパターンの人が大半です。
リーディングしている時も実は音声化している
リーディングは、実はリスニングの下準備をしているようなものなんです。なぜだと思いますか?英語を目で追っている、読んでいるときも、実は文字を音声化しているからです。
リーディングって、目で読んでいるような気がすると思いますが、読んでいることを実際に頭の中で声にしているんです。この現象は、sub-vocalize言われています。要するに、サイレントスピーチです。
読書中に発せられる内なる音声、「無意識の音声化」が意味を理解手伝いをしてくれています。それは、頭の中で言葉を「聞く」作業をすることで、リーディングとスピーキングのギャップを埋めてくれるからです。さらに、声に出さずに頭の中で単語を音声にするという作業もしていて、発音とイントネーションを良くする役割をしてくれています。
リーディングがこんなにリスニングに貢献しているなんて、気づいていましたか?
すごいことですよね。

リーディングは、目だけでなく口や耳も実は使っている
声帯の筋肉がどう動いているのか、装置を使って調べた実験があります。その実験では、英語を読んでいる時と、話している時で同じ結果が出たそうです。 もちろん、会話と全く同じ役割や動きを示しているわけではありませんが、目で文字を追って読んでいるだけだと思ったら、そうではなくて声に出して英語を読んでいる時と似た反応をしていたということがわかったんです。 つまり、リーディングは読むだけでなくスピーキングのようなことをしているということです。
実際には話しているわけではないけど、リーディングしている時に、スピーキング上達の過程に近いことをしています。だから、リーディングはスピーキングを上達させるための下準備として、とても役に立つのだということを覚えておくと良いでしょう。
リーディングは、スピーキング練習の下準備になっている
スピーキングの練習をしなくても、リーディングが上達に役立つなんて、読み書きはできるけど、スピーキングとリスニングは苦手、やりたくないという人には良いニュースですね。
- 副音声化(sub-vocalize)についての研究
リーディング効果最大化の必須条件は、正しい発音
繰り返しますが、リーディングするときにサイレントスピーチが行われ、読むことと聞くことには脳の本質的に同じ部分が関係していることがわかっています。ということは、リーディングをやるなら、読む単語の発音はできるだけ正しく知っておくほうが良さそうです。
「どうせ入れるなら、正しい発音で。」
というわけで、リーディングをする前にザッと単語を確認して、発音を知らない単語があったら、発音を調べて音を確認しておきましょう。どうせ読みながら心の中で音にしているんだったら、合っている発音でやった方がはるかに効果が高いことは当たり前といえば当たり前の話です。
・リーディングとリスニングどちらを先にやるべきかはレベルによって違う
・リーディングする前に出てくる単語の発音を確認する
・リーディングは音声化作業もしているので、正しい発音を知っていると学習効果が高くなる
正しい発音でリスニングを鍛えたい方はこちらも参考にしてください:英語発音とリスニング教材の選び方
ここまで読んでいただいて、リスニングとリーディングそれぞれの役割を理解していただけたと思います。ここからが大事なところです。
結局、リーディングとリスニング、どちらを先にやればいい?
どうすれば英語が聞き取れるようになるの? どうすれば英語を読めるようになるの? どうやって、何から始めればいい? 後で説明しますが、リーディングとリスニングどちらを先にやる方が効果があるのかは、現在のレベルや、何をしたいかによって違います。でも、時間もないし、どちらを優先すべきか迷ってしまいますよね。
英語レベル別の学習戦略
- 初心者はリスニングから始めることで、自然な発音やイントネーションを学ぶことができます。一文ずつ学習すると効果があります。先に英語の音を聴くことで発音とイントネーションを理解し、記憶に残します。次に、その文章をリーデイングすることで音で聞いた言葉と書いてある言葉の関連をリンクさせて、理解でき、理解できるので単語の意味を覚えることができます。
- 中級者以上では、リーディングとリスニングを組み合わせることで、総合的なレベルアップができます。中級者は、最初に英文を聞いた方が効率よく上達します。 中級者は、集中的に、同じようなレベルで、多種類の英文を聞いたり読んだりするのがおすすめです。特に、リーディングをする場合でも発音と文字(書いてある)情報を一致させることが大事です。多種類の英語に触れた方が良いとはいえ、読むとわかるけど発音もできないし聞き取れない、という状態だと効果半減です。
上級者は、興味が持てるものを選び、リーディングとリスニングを同時にやる。
上級になってきたら、同じものを繰り返して力をつけるより、読んだり聞いたりするコンテンツの質や種類の豊富さをアップするようにしましょう。同じテーマのコンテンツを文章や音、映像で見つけて、リーディングとリスニングを同時やりましょう。初級、中級者と違って、何度も同じコンテンツを読んだり聞いたりしなくても理解できるようになっているはずです。これが「自分は英語上級者になった」という基準の一つでもあります。
このように、英語学習においてリーディングとリスニングは互いに補完し合い、学習者によって異なるアプローチや戦略が必要です。学習の目的やレベルに応じて、適切なバランスを見つけることが重要となります。
上級者はリーディングとリスニング両方をバランスよく。同じものを何回も繰り返すより、種類と質のバリエーションを増やして、興味の範囲を広げると効果的!
初級、中級者がやりがちな間違い
初級者、中級者がやりがちな間違った戦略は、上級者(ほとんどのネットでの発信者はその傾向が強い)がおすすめする映画や海外ドラマ、動画などを活用した勉強方法をそのまま真似してしまうことです。自分の立ち位置をきちんと把握して、難しすぎるもの、今の自分には効果がない素材や、やり方を選ばないようにしましょう。

リーディングが苦手で継続できない人に朗報!
リーディングとリスニングの性質や役割を比較して紹介してきました。重要なのは、私たちは読んでいるか聞いているかにかかわらず、実際には同じことをしているという点。 そして、2 つの学習活動と学習目標は、強く連携しているという点。
ここで朗報です。
リーディングをやるのは気が重いという人でもできることがあります。まず朝一で英語を聴くことです。リーディングを伸ばすためにも、朝イチで手軽にできる方法、それがまず英語で何かを聞くことなんです。リーディングを伸ばすためにできることは読むことだけではないんです。リスニングがリーディング力アップにも効果があることがもうおわかりいただけましたね。
リーディングとリスニングで自分の英語スキルタイプを診断
リーディングとかリスニングで、自分がどんなことをして、どんな情報を得て、どんなスキルを高めているのか、正しく知っていますか?自分が好き/得意なものの特徴を知ることで、今後どこを伸ばし、克服すればいいのか明確になります。
リーディングとリスニングの関係を理解するためにも、ここで一度確認しておきましょう。
リーディングのスキル: テキストを解読し、文法と文の構造を理解し、書き言葉を理解する能力がリーディングスキルです。 文字、句読点、文の構成など、目に入ってくる内容の手がかりを見つけて、理解する能力もリーディングスキルです。
リスニングのスキル: 口調、ペース、アクセント、イントネーションのニュアンスなど、話し言葉を解釈して理解する能力がリスニングスキルです。 言葉のニュアンスや口調、スピード、訛り、強弱などから話し言葉の雰囲気や温度感を感じて理解する力です。聞こえた言葉をリアルタイムで処理して、話された内容や、言葉を超えた情報を感じ取る力もリスニングスキルに含まれます。
こうやって比べてみると、リーディングとリスニングでは、取れる情報の種類がやや違うし、処理の仕方も違うことがよくわかりますね。
ここでお伝えしたいのは、リーディングとかリスニングスキルの正しい定義ではなく、「自分はどちらが得意かな?どちらが好きかな?」と知った上でリスニングとリーディングのスキルを磨くとうまくいく、と言うことです。
リスニングの方が得意/好きな人
言葉以外に現れる表情とかトーンみたいなものからうまいこと雰囲気や意図を掴むのが得意な人っていますよね。
そう言う人は、話したり聞いたりするのはなんとなくできるし好きだけど、文章を読んできっちり正確に情報を取ったり、試験問題の正解を制限時間内で出すような作業は苦手か、好きではない傾向があります。
リスニングの方が好き、と言う人は「リーディングスキルを体系的に高める努力をしないと、上達しない可能性が高いな」と考えてみましょう。一度自分の勉強内容や方法を見直す必要があるかもしれません。
また、雰囲気でコンテンツを理解するスキルが高い分、語彙力が少なくてもなんとか誤魔化せてしまうことが多いのが難点。語彙力を戦略的に増やす努力をしないと、リーディングスキルが頭打ちになってしまいます。
リーディングの方が得意/好きな人
これは、洋画や洋楽、海外ドラマなど英語コンテンツを視聴する習慣がない人、興味がない人、海外生活や旅行経験があまりない人に多い傾向です。英語は受験や学校の科目、TOEIC、英検対策など「お勉強のための英語」が中心だった人も同様です。
文法や語法などもきっちり教科書通りセオリー通りのものを読んで、正しく情報を取ったり、文章の構造から意味を理解するような「ルール、構造理解→文章の中で実践」型の英語解釈をしてきた日本人は多いはず。
このタイプの人は、話し言葉のようにランダムで規則性がないもの、例外が多いコンテンツに戸惑ってしまうことが多いです。特に話し言葉は人によって声もトーンも違うし、発音も無数のバリエーションがあります。一方で、書き言葉の英語、特に「お勉強のための英語」素材には例外とか間違いが入らないようになっています。コンテンツの質が違うのです。語彙力や文法力が高いのに、同じようなレベルの単語が使われていてもリスニングになると途端に理解できなくなってしまったり、苦手だと感じてしまう原因の一つはここにあります。
リーディングの方が得意/好き だけどリスニングに出てくるような生きた英語のコンテンツが苦手という人は、様々な種類の英語を聞いて情報をとる練習をする必要があります。その時に、書き言葉の英語と違って、例外やバリエーションが多様だということを忘れないようにするのが大事です。
特に日本人は英語が学校の科目になっているので、「偏差値」とか「全体のレベル」のような指標で捉えがちです。
英語力全体ではなく、リーディング、リスニングそれぞれについて自分の特性とレベルを分けて考えると、効果的に伸ばすことができます。
リーディング力を上げるためのリスニング:注意点
リーディングは語彙や背景知識を増やすことができ、話し言葉を理解するために欠かせません。 同様に、リスニングは内容理解のスキルアップに役立つので、リスニングスキルが上がれば、リーディングスキルの向上にももちろん役立ちます。ただし、「たくさん聞き流して英語の音に慣れる」というような曖昧なとトレーニングではなく、「しっかり意味を取ろうとして聞く」というやり方をするようにしましょう。
- リーディングとリスニングの関係性についての研究
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リーディングとリスニングの関係性についての研究をWolfという研究者が中心に行いました。その結果から2 つのスキルの間に重要な重複があることを示唆しています。 語彙と単語の読解スキルの高さは、リーディングとリスニングスキルの両方に貢献しているということがわかりました。というわけで、リスニングスキルとリーディングスキルはお互い切っても切り離せないもので、影響を与え合っていることがわかっています。
出典:Wolf, M. C., Muijselaar, M. M. L., Boonstra, A. M., & De Bree, E. H. (2019). The relationship between reading and listening comprehension: Shared and modality-specific components. Reading and Writing, 32(7), 1747-1767.
研究者の研究なんて机上の空論だ、役に立たないと思う人もいるかもしれませんが、学者はこういった現象を状況設定して、一定条件のもとに検証しているので、誰かが主観や自分の経験で「なんとなくこうかな?」と思ったことを正当化する情報としては役立つと私は思っています。というわけで、パンツの安村さんではないけど「安心してください、ある程度立証されてますから」ということで根拠の一つとして紹介しました。
何から勉強すればいいか、どうしたら効率よくゴールに到達できるのか、迷っている方の参考になれば嬉しいです。
こちらもどうぞ!英語学習、結局何からやればいいの?
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