第96回アカデミー賞で起きた炎上とは?

2024年3月10日にアメリカで行われたアカデミー賞の授賞式で、助演男優賞を受賞したロバート・ダウニー・Jr.がプレゼンターのキー・ホイ・クァンが「アジア人俳優だったことが理由」で全く存在を無視したような態度を取った。白人はアジア人が視界に入っておらず空気のように扱った。アジア蔑視だ。と批判されました。

最初、私はこれがかなり全体的に大きなニュースとして取り上げられており、本人達からのコメントなどが発表されて鎮静化するか、そのままアジア差別への批判論調が強まって拡大するかと思っていました。

ところが、どちらも大外れでした。この記事では、私の主観ではなくなるべく起きていることを客観的に説明しようと思います。

記事の後半では、SNSの投稿でメジャーな英語フレーズを紹介します。

ニュースに関する日本と海外の温度差

日本のメディアや声が大きい一般人がSNSなどでこの件について取り上げていますが、どうもこの出来事の当事国、アメリカでの取り上げられ方とかなり違うと思ったからです。

これは海外でも起きていることで、日本に限ったことではないと思いますが、立場や文化が変われば同じ事柄についても見方は当然違います。

様々なニュースに関して、日本で出回っている情報はずいぶん海外と違うなあと思うこと頻繁にあります。

どちらが良いとか悪いとか正しいとか間違っていると言うことではなく、客観的に見て「何が起きているのか」を把握することが大事だと私は考えています。

海外で起きたことを、日本語のメディアと日本人の視点だけでしか見ないと真実を見落としたり、海外の人と全く異なる見解しか知らずに過ごすことになります。

このページを見ている人は、おそらく英語学習や海外文化に興味があったり、海外と関係ある生活や仕事をしているか、これからしたいと思っている人が大半だと思います。

そうなのであれば、日本だけの視点ではなく、海外での視点や、海外から見た視点についても知っておく必要があります。受け入れる受け入れないは別として、そういう考え方をする人もいる、ということを知らずにいくら英語を勉強しても、海外の人とのコミュニケーションが成立しないからです。

ロバート・ダウニー・Jr.の「アジア差別」は誤解だった?

日本のメディアや個人でも、ロバート・ダウニー・Jr.の態度はアジア差別の意図はなく、単に大舞台で緊張していただけだとか、大勢の人が壇上にいたから誰と握手やハグをすればいいか戸惑っただけだとか、キー・ホイ・クァンからひったくるようにしてトロフィーを受け取ったことを擁護する意見もありました。

これは日本人だけでなく、海外でも同様です。

私が問題だと思ったのは、こちらの記事にも書いたように、アメリカの主要メディアがこの件を全く無視していることです。

そしてもう一つ問題だと思ったのは、日本のメディアや個人が、アメリカでは問題にすらされていないことを問題視していないことだと思いました。

ですから、ネットの記事で出回っているように「アジア差別は誤解」とか「アジア差別だと考えるのは過剰反応だ」ということではありません。

知っておかなければならない事実は、「アメリカでは差別があったという扱いにすらなっておらず、アメリカでアメリカのメディアを見ている人(何人なのか、アジア人が多いのかなどはわかりません)はこのことを問題にしていないか、気づいてすらいない」ということだと私は思いました。

日本のメディアは概ね「一連の映像が切り取られ、SNSで拡散して炎上している」と主張していますが実際アメリカの主要メディアでは一連の出来事は取り上げてすらいないのです。炎上以前の問題です。

海外の反応の検証結果

YouTubeで最も視聴されている関連動画はこちらのABCニュースです。2024年3月14日21時の時点で、556万回再生されて、コメントはおよそ6500件ありました。

他にも74万回再生されている動画(コメント数500)や数万回再生されている動画がちらほらあるだけで、今年のアカデミー賞はあまり関心を集めていないのかもしれません。2023年のアカデミー賞と比べると、動画の数も再生数もコメント数も少ない印象です。

2024年に話を戻すと、最も再生されたABCニュース以外の動画のコメントを見てみましたが、ロバート・ダウニー・Jr.の態度を問題にしたコメントはほぼ見当たりませんでした。

今回は、ABCニュースに投稿されたコメント6500件の中から、評価が高い順に並べ替えて上位3000件を分析しました。
主観を入れないようにするために、分析には語彙分析のツールとデータ分析のツールを使って複合的に行いました。
内訳は、以下の通りでした。

  1. 批判と失望 77 %
  2. 肯定的な意見と祝福 10 %
  3. 中立的な意見・感想 9 %
  4. 肯定的な意見 4 %

当然と言えば当然の結果ですが、批判的な目を持って情報を検索するとこの動画が一番上に表示されるので、それを見た人がコメントした結果こうなったとも考えられます。

まとめると、海外の報道と反応は下記のような結果でした。

・アメリカの主要メディアはこの事を取り上げてもいないし問題にもしていない
・取り上げた一部のメディアでは差別に対する批判の声が多数上がっている

情報検索の方法は人によって使う単語が違うし、検索語によって出てくる結果もかなり違います。
私はなるべく偏りがないように網羅的に検索して検証しました。
それでも、個人がやる事なので偏りはあると思いますが、、、。

海外メディアのコメントで使われていたSNSの英語表現

こちらの記事では、ネット、SNS、炎上関係の必須英語表現を紹介しました。
この記事では、実際にこういった炎上や物議を醸す(賛否両論ある)トピックで実際によく使われるし、今回も使われていた代表的な英語表現をいくつか紹介します。

ネット、SNS、炎上関係の必須英語表現

肯定的な意見と祝福の言葉

  • “Congratulations RDJ”
    RDJはロバート・ダウニー・Jr.の頭文字をとったもの。
  • “Well deserved!”
  • “Love you 3000”
    トニー・スターク(アイアンマン)の娘で、レクシー・レイブが演じたモーガン・スタークが言った「3000回愛している(I Love You 3000)」というセリフ。ロバート・ダウニーJr.の代表作でもあるアイアンマンの有名なセリフを引用しているコメントです。
  • “A long time coming”
  • “Inspiring comeback”
    上記2つともRDJが長らく薬物問題でキャリアにアップダウンがあったけど、とうとう克服して戻ってきたことへの賞賛を表現しています。

批判と失望

  • “So rude”
  • “Disappointed in RDJ”
  • “Lost all respect”
  • “Ignored Ke Huy Quan”
  • “Rude and arrogant”

    
rude(無礼な)arrogant(傲慢な)は今回の態度にまさしくぴったりな形容詞です。

中立的な意見・感想

  • ”Tony Stark persona”
    RDJはよく、自身が演じたアイアンマンのトニー・スタークのキャラ設定は彼自身なのではないかと言われています。本人は否定ていますが、彼の尊大に見えた今回の振る舞いは、ナルシスト、目立ちたがり屋で高慢な態度を見せることが多い(本当はフリだけで優しい面もあるとされている)目立つトニー・スタークのような感じだという表現ですね。
  • “Neutral about the incident”


    ニュートラルは中立という意味。肯定も否定もしないっていうことですね。

  • “Just RDJ being RDJ”

彼が彼らしく振る舞っただけだ、という意味ですが、これはポジティブとネガティブどちらにも取れますね。

”Oscars moment”

オスカー賞では毎年何らかの事件が起きるので、この件が今年の「事件」だという意味のコメントでしょう。

肯定的な意見

  • “Misinterpreted actions”
  • “Overblown reaction”
  • “He did acknowledge Ke later”

    
バックステージでちゃんとキーと握手や抱擁をしていたとする擁護意見です。
  • “Nervous and excited”
  • “Criticism is too harsh”
    criticizeは動詞で「批判する」

海外メディアで話題になっていた本当のニュースとは?

海外の主要メディアで、ロバート・ダウニー・Jr.の件で最も話題になっていたのは、アジア差別のことではありません。実はもう一つ最も騒がれていた事件というか出来事がありました。
それは、司会のジミー・キンメルによる「いじり」です。

アメリカの人気番組の司会で、コメディアンのジミー・キンメルが4回目の司会を務めたことも話題になりましたが、彼をふさわしくないと思っている人も多かったようです。

授賞式では司会者が登壇者をブラックジョークでからかい、からかわれた方がいかに当意即妙な返しをするのかも見所の一つになっています。
今回、ジミーはRDJの過去のドラッグ中毒やアップダウンが激しいキャリアをいじったのですが、うまくいかず、コケてしまい回復するために下ネタジョークを連発してひんしゅくを買っていました。

この部分の方が、アメリカの主要メディアでは取り上げられていました。
日本ではほとんどというか全く触れられていないようですが。

私はアメリカに住んでいたわけではないので、下ネタ表現にまで幅広い知識はありません。
今回、聞き取れたけど意味がどうしてもわからない表現があったので、ChatGPTにしつこく聞いてようやく理解できました。

下品なジョークなのでここで書くのはやめておきます。
興味がある人は、こちらの動画を見て自分で意味を調べてみてくださいね。


Watch Jimmy Kimmel ROAST Robert Downey Jr. in Oscars Monologue

こういう時、外国人の友達に意味を聞いたりすることもありますが、今回のジョークには連呼するのが憚られる言葉が含まれていたので、こういう時恥ずかしげもなく聞けるのがChatGPTのいいところですね。

アメリカのジョークは、単語が聞き取れても意味がわからないものがたくさんあって当然です。
でも、聞き取れさえすれば調べることができるのです。

海外の映画やメディアを字幕なしで理解して楽しめるようになりたいなら、発音矯正をしてリスニング力のコアマッスルを強化するのがおすすめです。

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アカデミー賞2024年で取り上げられた「アジア差別」事件から、海外と日本の見え方の違いを紹介しました。
私がお伝えしたいのは、誰が合ってるとか間違っているということではなく、情報の取り方によって見えるものは全然違うということと、見えているものだけを信じない方が良いということです。

英語を使っている人が偉いわけではなく、選択肢が広がるので有効に使いましょう、というメッセージが伝われば幸いです。


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